ウクライナ企業の死闘 / 松原実穂子

2026年1月12日月曜日

ノンフィクション

t f B! P L

ロシアによる侵攻下で奮闘するウクライナ企業の姿を描いたノンフィクションです。

著者は、NTTのチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジストで、日本におけるサイバー安全保障の第一人者である松原実穂子さんです。
現地取材を通じて、戦火の中でも事業を継続し、従業員を守り、経済を支えるウクライナの企業人たちのリアルな声を記録します。
IT、製造、農業など多様な業種の事例を通じて、戦争と経済の交錯、そして人間の強さと希望を浮き彫りにします。
私の印象に残った部分を以下にご紹介します。

【ウクライナ企業の活動】

  • ロシアの軍事侵攻の1週間前、ウクライナ議会は急遽法律を制定し、政府と民間企業によるクラウドへのデータ移行を許可していた。これにより、ウクライナ国立銀行はデータを(おそらくウクライナ国外の)クラウドにアップした。軍事侵攻から1週間足らずで政府の主要データセンターは破壊されてしまったが、既にバックアップデータがクラウドにアップされていたため、データが失われることはなかった。
  • 2022年2月~2024年11月に鉄道業界が受けた推定損害額は約6162億円。2024年12月末までの運輸関係の想定被害額は6兆6925億円であり、これは2023年のウクライナのGDPの26%に相当する。それでもなお、ウクライナ鉄道は諦めず、復旧と運行を続けている。2024年6月時点で、83の橋が破壊され46が再建された。52kmの線路が破壊され25㎞が再建された。

【アメリカの活動】

  • 2018年に米国サイバー軍が最初に行ったハント・フォワード(サイバー防御)作戦の場所としてウクライナが選ばれたのは、同年11月の米国中間選挙へのロシアの介入を阻止するため、他国の状況を学ぶ必要が生じたからであろう。2016年の米大統領選に対するロシアからの影響工作のもたらした衝撃は、それほど凄まじかったのである。

【ウクライナから学ぶべき教訓】

  • 在沖米軍が使う電力量は、沖縄の電力需要の9%に及ぶ。通信や電力などのインフラサービスが無ければ、自衛隊も米軍も活動の継続は難しい。有事の際、重要インフラ企業とそこにシステムを納入している企業を支える必要がある。
  • 日本は、重要インフラ防御の優先順と、限られた防空資源の最適配分を今後検討するとともに、ミサイルやドローン攻撃の対策として、ソイルアーマーや金網などの防護機材の配置についても、政府主導で進めるべきである。
  • 2024年10月時点で、中国本土に10万人弱、台湾に2万人強の邦人が在留している。有事の際、どのタイミングでいかなる手段を使って退避させるのか。新型コロナの感染拡大により、2020年1月~2月にかけて武漢から800人強の日本人を5回のチャーター機で帰国させた際のことを考えると、退避は困難を極めるだろう。

ビジネスと国際情勢に関心のある読者にとって、深い示唆を与える一冊です。


殺されても、つなぐ
電力・エネルギー、通信、金融、運輸…なぜ企業人たちは命をかけて砲撃の中を走るのか。

誰も書かなかった名もなき英雄たちの戦い
ウクライナ戦争の真実

「日常」を守る企業人たちの決断
ロシアによる攻撃の中で防衛、避難、継戦、そして国家を維持し、顧客と経済、自由を守るために、重要インフラの企業人は何を決断し、何を犠牲にしたのか。ロシアによる侵略戦争に立ち向かったウクライナの教訓。

【主な目次】
第一章 つなぎ続けた英雄たち 電力・エネルギー
第二章 命がけの「情報の自由」 通信
第三章 戒厳令下のクラウド移行 金融
第四章 砲撃の中を走るインフラ 運輸
第五章 重要インフラと能動的サイバー防御
終章 ウクライナの教訓と台湾有事
(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
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