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毎日新聞社の特派員としてイスラエル・パレスチナに赴任し、以後6年半にわたり現地で暮らした著者が、「イスラエルは、なぜそこまでガザ地区やパレスチナの市民を残酷な目に合わせ続けるのか?」という多くの日本人が抱いているであろう疑問に迫る一冊です。
著者は、イスラエルのユダヤ人が抱えるホロコーストの「被害者意識」と、それに対する欧米諸国の「加害者意識」が、現在の紛争構造に深く影響していると分析します。
また、宗教・教育・軍事が一体化した社会の光と闇を描き、日本人が学ぶべき視点を提示します。
私の印象に残った著者の解説と主張を以下にご紹介します。
【約束の地】
- 神が「約束の地」としてユダヤ人に与えたこの地に住み、守り続けることで「神聖な信託」を守ろうとする世界観がイスラエルには根付いている。国民は兵役をこなし、軍事費を含む高い税金を払い、国家はそれと引き換えに、絶対的な「安住の地」を提供するという「国家との契約」という解釈にその世界観は反映されている。2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃(10.7事件)以後、宗教的な信条を強く持つイスラエル人は、そのような「国家との契約」に一段と強く従おうとしている。その一方、世俗派が支持する中道や中道左派には、国家(イスラエル)を捨てることも選択肢の一つと考えている人もいる。
- イスラエルに住むユダヤ人には、敵対的な人々に囲まれている、という被包囲意識がある。パレスチナはアラブ諸国の大軍の一部であり、自分たちこそが、アラブの憎悪の海に浮かぶ孤島だと信じている。
- 多くのイスラエル人は、ガザへの残酷な攻撃を気にしていない。自分たちは10.7事件の被害者なのだから報復する権利があるという意識をもち、それゆえに道徳的な観念から離脱し、また、周囲にも道徳的なことを言わせず沈黙させようとしているのではないか、という意見もある。
【ネタニヤフ政権のパレスチナ政策】
- 1977年5月、長く政権の座にいた労働党が下野し、右派政党リクード(2025年春現在、首相のネタニヤフ氏が党首)が政権を奪取した。保守の時代の幕開けだ。以後、入植活動は本格的に国策へ引き上げられた。パレスチナ市民が団結してパレスチナ国家を樹立することを阻止するため、彼らの居住区にイスラエル市民の入植地を建設し、分断した。入植者は、国防と宗教を理由に、入植活動を正当化する。
- ネタニヤフ政権は、西岸地区とガザ地区の指導者を競わせ、両者の分断を促す政策をとり続けている。相手を分断させておきながら、「パレスチナを代表する和平交渉のパートナーがいない」というのはまさにマッチポンプだが、イスラエル社会はそんな政治家の台詞を繰り返し聞く中で、「和平交渉の相手はいない」という思いを強めた。
- ネタニヤフ政権はこの状態を維持するため、パレスチナ問題を「解決」するのではなく、「管理」するというという手法を取り続けている。
- ネタニヤフ氏は2012年と2018年、親ハマスの国であるカタールがガザに支援金を送ることを許可した。ガザの貧困化が進み、ハマスが弱体化しすぎないために許可したとされる。ハマスはその資金を軍事強化に充て、10.7事件を引き起こしたと報告されている。
【それぞれの市民の意識】
- ハマスがどれほど残虐な事件を起こしても、パレスチナ人に一定程度支持され続けるのは、パレスチナ人が暴力的な民族だからではなく、その多くが、ハマスが掲げる抵抗の精神を支持しているからだ。
- イスラエルのユダヤ人は、パレスチナという火山の上に腰を下ろし、なぜかその火山は永遠に噴火しないという思い込みの中で生きてきた。しかし、心地よいその繭、閉ざされた関心領域から一歩出て、パレスチナとの対話を再開し、その苦境に目を向けなければ、真の「安住の地」など得られないと感じ始めた人もいる。
パレスチナ問題の闇に迫り、希望を見出したい方におススメします。
なぜ、世界中から非難されても彼らは攻撃・報復を止めないのか。
国家の存亡をかけた「悪との戦い」
建国以来、周辺地域との戦闘を繰り返してきた国家の論理がわかれば、イスラエル・パレスチナ紛争の本質も見えてくる。
新聞協会賞2年連続受賞&ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
ワシントン特派員、エルサレム支局長などを歴任。
特派員、研究者、ボランティアとして現地に6年半暮らした特異な経験をもとに、 歴史的経緯から紡ぎ出されるイスラエルの「光」と「闇」の世界を徹底解説。
筆者は2013年3月、エルサレム特派員としてイスラエル、パレスチナ地域に赴任し、2019年9月までの6年半にわたり現地で暮らした。そのころから、筆者の心にはある疑問が深く根を張りはじめていた。2023年10月7日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲し、イスラエルによるガザへの報復攻撃が長期化するにつれ、その疑問はかつてないほど存在感を増した。
「イスラエルのユダヤ人は、隣人であるパレスチナ市民が苦境にあえいでいるというのに、なぜあれほど無頓着でいられるのか」 「彼らはいったい、どのような世界観の中に生きているのか」
強い疑問が筆者に芽生えたのは、2014年夏の取材がきっかけだった。約50日間にわたり続いたイスラエルとハマスの戦闘。そのうちの25日間、筆者はガザ側から惨状を伝えた。イスラエル軍による無数の1トン爆弾の投下、崩れ落ちた建物の隙間に取り残されるガザ市民と子供たち。目の前に広がる光景は、まさに地獄絵図であった。2009年にアフガニスタンで、米軍と現地の支配勢力タリバンの戦闘を取材した経験のある筆者にとっても、これほど過酷な惨状を目にしたことはなかった。
「イスラエルのユダヤ人は所詮、そういう人たちだから」。そんな風に切り捨てる声も耳にした。だが、事態はそれほど単純ではないと感じた。人間も社会も多面体であり、「闇」だけでなく「光」も存在する。完全な善もなければ、絶対の悪もない。そう信じる筆者は、イスラエル人の内面世界――その〈世界観の森〉に分け入ってみたいとの衝動に突き動かされ、この本を書くに至った。
本書は、紛争や政治心理学の専門家らへの取材、現地の人々との対話を通じて、紛争地に暮らす人々に共通する認識や世界観、そしてイスラエルのユダヤ人に特徴的と思われる思考を明らかにしようとする試みである。戦後80年を迎えた日本にとっても、他者の世界観に触れることは、自らの思考と社会のありようを見つめ直す契機となるはずだ。
日々のニュースだけでは見えてこないイスラエル・パレスチナ紛争の本質に踏み込み、私たち一人ひとりがどう関わるべきかを問いかける一冊。
国家の存亡をかけた「悪との戦い」
建国以来、周辺地域との戦闘を繰り返してきた国家の論理がわかれば、イスラエル・パレスチナ紛争の本質も見えてくる。
新聞協会賞2年連続受賞&ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
ワシントン特派員、エルサレム支局長などを歴任。
特派員、研究者、ボランティアとして現地に6年半暮らした特異な経験をもとに、 歴史的経緯から紡ぎ出されるイスラエルの「光」と「闇」の世界を徹底解説。
筆者は2013年3月、エルサレム特派員としてイスラエル、パレスチナ地域に赴任し、2019年9月までの6年半にわたり現地で暮らした。そのころから、筆者の心にはある疑問が深く根を張りはじめていた。2023年10月7日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲し、イスラエルによるガザへの報復攻撃が長期化するにつれ、その疑問はかつてないほど存在感を増した。
「イスラエルのユダヤ人は、隣人であるパレスチナ市民が苦境にあえいでいるというのに、なぜあれほど無頓着でいられるのか」 「彼らはいったい、どのような世界観の中に生きているのか」
強い疑問が筆者に芽生えたのは、2014年夏の取材がきっかけだった。約50日間にわたり続いたイスラエルとハマスの戦闘。そのうちの25日間、筆者はガザ側から惨状を伝えた。イスラエル軍による無数の1トン爆弾の投下、崩れ落ちた建物の隙間に取り残されるガザ市民と子供たち。目の前に広がる光景は、まさに地獄絵図であった。2009年にアフガニスタンで、米軍と現地の支配勢力タリバンの戦闘を取材した経験のある筆者にとっても、これほど過酷な惨状を目にしたことはなかった。
「イスラエルのユダヤ人は所詮、そういう人たちだから」。そんな風に切り捨てる声も耳にした。だが、事態はそれほど単純ではないと感じた。人間も社会も多面体であり、「闇」だけでなく「光」も存在する。完全な善もなければ、絶対の悪もない。そう信じる筆者は、イスラエル人の内面世界――その〈世界観の森〉に分け入ってみたいとの衝動に突き動かされ、この本を書くに至った。
本書は、紛争や政治心理学の専門家らへの取材、現地の人々との対話を通じて、紛争地に暮らす人々に共通する認識や世界観、そしてイスラエルのユダヤ人に特徴的と思われる思考を明らかにしようとする試みである。戦後80年を迎えた日本にとっても、他者の世界観に触れることは、自らの思考と社会のありようを見つめ直す契機となるはずだ。
日々のニュースだけでは見えてこないイスラエル・パレスチナ紛争の本質に踏み込み、私たち一人ひとりがどう関わるべきかを問いかける一冊。
(amazonより抜粋して引用)

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