覇権国家アメリカ「対中強硬」の深淵 / 園田耕司

2024年9月28日土曜日

ノンフィクション

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朝日新聞で元ワシントン特派員を務めた著者が、中国に対する米国の政策の変遷、今後の米中関係、日本が戦争に巻き込まれないための提案等をまとめた一冊です。

現在の米中対立は、米国が自らの覇権を守るため、中国の覇権国家化を全力で防ごうとする、いわば既存の覇権国家の逆襲であると著者は説明します。

私が興味を持った著者の見解や提案を以下にご紹介します。

【バイデン副大統領と習近平国家副主席】

  • 中国は、毛沢東への個人崇拝と文化大革命への反省から、合議や多数決によって意思決定する集団指導体制を築いた。
  • しかし、胡錦涛政権では集団指導体制が過度に進み、各グループが自分たちの利益を追求し、政権内のコンセンサスを得ることが困難になったこと、また、中国国内の経済格差と政治腐敗により、党と人民との距離が離れてしまったことを懸念している、と2011年時点で国家副主席だった習近平は、米国副大統領だったバイデンに語った。

【関与政策から競争政策へ】

  • トランプ政権は2017年12月に策定した国家安全保障戦略(NSS)で、それまでの(中国の経済的繁栄を手助けする)関与政策の終結を謳い、(中国の台頭に対抗する)競争政策を開始した。
  • もともと対中穏健派だったバイデンが強硬派になった理由は3つあり、①集団指導体制を見直して自身への権力集中を図り威圧的な外交を繰り広げるようになったこと、②リベラル派も保守派も中国に対しては「強硬姿勢」が米国民のコンセンサスとなったこと、③民主主義と人権を重んじるリベラリストの立場から権威主義を強める習近平に危機感を覚えたこと、である。
  • バイデン大統領はトランプの政策を激しく批判したが、対中競争政策はそのまま継続した。

【米国から見た中国】

  • 米国の名目GDPは中国より7.5兆ドル上回っており、国防費は中国の約3倍である。経済力・軍事力で米国は依然として世界第1位であり、第2位の中国が自分たちを追い越そうとするのを黙って見過ごすことはあり得ない
  • 米国では、議事堂襲撃事件に発展した大統領選の結果だけでなく、移民、銃規制、妊娠中絶など、あらゆる問題で民主党と共和党が対立しているが、そんな両党も国民も唯一団結できるテーマが「中国問題」である。
  • 東西各陣営間で経済的に切り離されていた米ソ冷戦時代とは異なり、米国のモノの輸入先は2000年代後半から中国が首位を保ち続けていたように、米中は経済的に相互依存関係にある。
  • 世界の8割以上の最先端の半導体チップを製造する台湾がもし中国の手に落ちれば、米国も日本も経済が立ち行かなくなる。
  • ワシントンの大勢は、台湾侵攻が実現可能となる中国軍の態勢は、2027年までに整うと見ている。

【他の国々から見た中国】

  • 中国が「平和的台頭」を標榜しても、実際にはパワーを重視した覇権主義的な動きを見せている以上、周辺国もパワーを重視せざるを得ない。日本が安保3文書を改訂し防衛予算を大幅増するのも同じ理由に基づく。大事なことは、周辺国が「中国は覇権国家になろうとしている」と受け止めているという事実なのだ。
  • 中国共産党は、旧ソ連が民主主義システムを導入して政治的混乱を引き起こし崩壊したことを熟知している。このため一党独裁の政治体制のまま市場主義経済だけを取り入れ、経済的に成長を遂げることに成功した。

【中国の近代歴史感】

  • 2022年の米国下院議長ペロシ氏の台湾訪問に対する報復措置として、中国は「今日の中国は、100年以上にわたって辱められ、いじめられてきたような古い中国ではない」と強調し、台湾周辺での大規模軍事演習を行った。
  • 中国の威圧的態度の背景には、中国特有の屈辱的歴史がある。今や「100年の国恥」当時とは国力が異なり、西洋諸国に反撃できるとの強烈なプライドを、中国は持っている。

【中国の台湾侵攻と日本の対応策】

  • 米国の専門家による最も可能性の高い中国軍の台湾侵攻は、海上封鎖により台湾へのエネルギー等の輸入を阻止し経済的な打撃を与え、台湾政府に統一を迫るというシナリオである。
  • このシナリオでは、米国や日本などの軍事介入のリスクを小さくしたうえで、台湾軍だけを相手に最小限の戦闘により甚大な経済的打撃を与えられる点で、中国にメリットがある。
  • 集団的自衛権を限定的にのみ認めている現在の憲法解釈の下では、日本がNATOのような集団的防衛組織に加入することはできない。とすれば、日本は、NATOのパートナーとなり、英独仏の国々との関係を強化するべきであろう。

【日米同盟を超えた先の日本の選択】

  • 日本は米国の中距離ミサイルの配備を受け入れ、対中抑止力を強化するべきとの意見もあるが、もし米軍が日本に配備した中距離ミサイルで中国を攻撃すると、日本の国土がその報復攻撃を受け、国家としての主体的意思決定がないまま日中間の戦争が始まってしまう。
  • 日本は、米国との間で対中国の安全保障上の戦略目標は共有しているものの、両国の国益は異なるという点を自覚した上で、安全保障政策を組み立てる必要がある。
  • 日米同盟に依存できない状況も想定し、日本の現実的な選択肢を見出すために、タブーなき議論を重ねるべきである。

【米中の戦争回避】

  • 軍備管理をめぐる対話について、中国側は自分たちの軍事力が米軍に劣ることから消極的であるため、米国側が主導的にルール作りを進めなければならない。
米中の覇権争い激化と中国の台湾侵攻を想定した日本の安全保障政策に興味をお持ちの方におススメします。

中国国内を一緒に旅したバイデンと習近平。
対中穏健派だったバイデンはなぜ対中強硬に変わったのか。
トランプはなぜ歴代米政権の関与政策をやめ、新たに競争政策を始めたのか。
2018年から4年半ワシントン特派員を務め米中関係を取材してきた著者が、米政権内部で対中政策を形成してきた多数の米政府高官への直接取材をもとにアメリカが対中強硬に突き進む深淵に迫る。
台湾海峡有事など日本にとっての地政学的リスクにも迫る。
(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
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