なぜ難民を受け入れるのか ~人道と国益の交差点~ / 橋本直子

2024年8月31日土曜日

ノンフィクション

t f B! P L

母国で迫害された難民を受け入れて庇護すべきという人道的立場と、(犯罪など起こさない)受入国にとって有益な人材のみを難民として受け入れたいという受入国の本音を、どのようにバランスさせれば良いか、世界各国と日本の事例を取り上げつつ考察する本です。


2021年3月、名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ人女性が、体調不良を訴え続けていたにもかかわらず適切な治療を施されないまま亡くなった事件の報道を見て、私は日本の難民認定の実態を初めて知りました。
難民政策とその実務に携わった著者は、「普通の日本人」向けにわかりやすい難民受け入れの入門書を書きたいと思い、この本を執筆したのだそうです。
私が理解した著者の解説と意見の一部をご紹介します。

  • 世界における難民の約8割は途上国で庇護されており、先進国がより積極的に難民を受け入れることが望ましい。
  • 日本は多額のODAを拠出する一方で、難民の受け入れ数は他の自由民主主義的OECD諸国の中で経済規模の割に極端に少なく、「ジャパニーズ・ソリューション」と揶揄されている。
  • 日本の難民認定率は1%程度で、他のG7諸国と比較して桁違いに低いが、その理由として以下の6つが指摘されている。
(認定率が低いことを擁護する立場から)
    
就労目的とした制度の濫用・誤用が多い
    ②難民発生国の出身者が少ない
    「迫害のおそれ」が無い者が多い
(認定率が低いことを批判する立場から)
    「迫害」の解釈が狭すぎる
    ⑤難民であるという主張の信憑性や迫害のおそれを証明するためのハードルが高すぎる
    ⑥難民審査参与員制度が機能していない

  • 1975年に、ラオスとカンボジアで社会主義体制への移行という政変が起こり、ベトナム、ラオス、カンボジアの3国から大量の「インドシナ難民」が周辺国に逃れ、その内日本は2005年までに11,3191人の難民を受け入れた。

  • 2021年8月に、タリバンがアフガニスタン全土を制圧すると、アフガニスタンに駐在していた米国などの国際援助提供国の機関に勤務していたアフガニスタン人職員は、命を狙われる恐れが急激に高まった。
  • その際、日本の在外公館に助けを求めた元日本大使館や元JICA等の職員や現職のNGO職員のアフガニスタン人に対し、日本政府は通常の短期滞在査証発給要件よりもハードルの高い条件をわざわざ新設して要求した。
  • アフガニスタン人職員に対する日本政府の非人道性は、今後日本が途上国で国際協力活動をするために優秀な現地スタッフを確保する上で大きな障害となる可能性が高く、日本の国益を損ねる結果となった。

  • 2023年末時点で日本が継続的に第三国定住経由で受け入れている難民は年間わずか60人であり、「日本は分相応の責任を果たしていない」と国際的に批判されている。
  • 一方、2022年には半年余りの期間に、ウクライナからの(避)難民2000人超を、大きな混乱なく受け入れた。その気になれば年間数千人の難民受け入れが可能であることを日本は自ら証明した。
  • 母国で迫害された難民を庇護する政策と国内の労働力不足を補うための政策は峻別しなければならないが、第三国定住難民世帯の9割以上が、来日半年後に就労先を見つけて自立できているという事実は、国内の労働市場に需要があることの証左でもある。

名古屋出入国在留管理局の事件への対策と難民申請の乱用防止等の観点から、2023年・2024年と立て続けに入管法が改正されました。
これまでの日本の難民受け入れ政策と今後の難民認定のあるべき姿について興味のある方におススメします。

世界であいつぐ迫害や人権侵害。
「自国第一」を掲げるポピュリズムの台頭。
状況が年ごとに複雑になるなか、国際社会は葛藤を抱えつつも難民保護の取り組みを続けている。
各国はいかなる論理と方法で受け入れを行なってきたのか。
日本の課題は何か。
政策研究の知見と実務経験をふまえ、多角的な視点で難民「問題」を考える。
(amazonより抜粋して引用)

このブログを検索

ブログ アーカイブ

自己紹介

自分の写真
関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
医療・医薬に関する一般向けの本、母のための老人施設・介護の本、私が興味を持つ科学、音楽、歴史に関する本、時事解説本、小説など、年間100冊程度読んでいます。
私が実際に読んでぜひ皆様におすすめしたいと思った本やその関連情報をこのブログで発信していきます。

インドの野心 / 石原孝、伊藤弘毅

リンク 朝日新聞の記者としてニューデリー支局に勤務した経験を持つ著者2名が、文化、教育、経済、外交などさまざまな角度から「急成長する大国インドの実像」を描いた新書です。 世界最大の人口 を抱え、 若年層が多い という強みを持つ一方、 教育格差や雇用不足 、 宗教・...

フォロワー

QooQ