「悪の枢軸」イランの正体 / 飯島健太

2024年6月4日火曜日

ノンフィクション

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朝日新聞社テヘラン支局長として2020年10月~2023年1月にイランに滞在した著者が、イラン国内から見える世界の実相を解説してくれます。

米国ブッシュ大統領から「悪の枢軸」の1つに名指しされ、現在も、ウクライナに侵攻したロシアに武器を供給したり、イスラエルを越境攻撃したハマスを支援したりと、ニュースの背後にちょくちょく出てくるイランについて、著者が実態をレポートします。
私の印象に残った著者の解説と主張の一部をご紹介します。

【親イラン勢力への支援】
  • ある専門家は、イランが中東各地で親イラン勢力を育て始めたきっかけは、2001年9月11日の同時多発テロにあると考えている。
  • 米国は、オサマ・ビン・ラディンを匿っているという理由で同年10月にアフガニスタンに軍事侵攻し、2003年には大量破壊兵器を保有しているという理由でイラクに侵攻する。米国の侵攻を受けたイランの両隣の国々は瞬時に政権が倒された。次に米国はイランを攻撃するのではないかと脅威を感じたイラン政府は、イランの外側で敵の攻撃を食い止めることで防衛力を強化しようと考え、中東各地の武装勢力を支援するようになった、という説である。

【核合意】
  • 2015年には、核兵器開発を疑われていたイランが核開発を制限する代わりに、国連や米国はそれまで科してきた経済制裁を緩めるという「核合意」に至ったものの、2018年に米国トランプ大統領はこれを離脱し、イランに対する制裁を再開した。理由は、イランが核開発以外のミサイル開発や中東各地の親イラン勢力への支援が野放しであったため。
  • イランはこれに対抗し、制限を超える核開発を推し進めている。米国でバイデン政権が発足した2021年、イラン側も新たにライシが大統領となり、核合意の立て直しを目指す協議(核協議)が行われた。そこでライシは、「米国による制裁の解除、二度と合意から離脱せず新たな制裁も科さないという保証」という厳しい条件を米国に突きつけた。
  • 2022年、核協議は大詰めを迎え、核合意復活が期待されたが、その後、核合意の参加国であるロシアがウクライナに侵攻する。制裁解除によりイランが原油輸出を再開すると、欧州への売先が減ったロシアの原油輸出が更に減ることから、ロシアは核協議にブレーキをかける

【中国・ロシアへの接近】
  • イランは東西冷戦の時代から、「東の共産主義でもなく西の資本主義でもなく、あるのはイスラム共和国のみ」との方針であったが、核協議が行き詰まり、米国から制裁を受け、西側諸国からも経済的に距離を置かれた結果、中国・ロシアに急激に接近する。
  • 2023年、イランがサウジアラビアとの間で国交正常化した際に、その仲介役が中国であったことは世界を驚かせ、イランと中国の接近を印象付けた。

【女性、命、自由】
  • 2022年、テヘランでヒジャブの着け方が不適切という理由で逮捕された女性が、警察署のロビーで倒れ、搬送先で死亡した。イラン国民は警察による暴行を強く疑い、葬儀は参列者らによる抗議デモに代わる。
  • この事件をきっかけに、これまで差別的な扱いを受け、息の詰まる暮らしを強いられてきた女性は、「女性、命、自由」を掲げて批判の声を上げ、40年以上続くイスラム革命体制そのものに不満を持つ男性も怒りを爆発させた。
  • これに対し最高指導者ハメネイは、デモ参加者を「暴徒」と呼び、「国民」を守るために「暴徒」を徹底的に弾圧した。
  • 事件から2023年9月までの1年間で、551人のデモ参加者が治安部隊によって殺害された結果、デモは鎮静化している。

イランは「悪の枢軸」か?

イランの正体に迫りたい方に、おススメします。

2020年から2年半、特派員として現地に暮らし、イランの実体を追ったノンフィクション。
制裁の影響で貧困にあえぎ、不満を溜める国民たち。
そんな国民を抑圧し、核開発を進める国側。
イランという国にただよう「悪」とはいったいなにか。
世界最大のテロ支援国家、嫌米国家の動きから米中ロの覇権争い、世界の勢力図の実相が見えてくる。
(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
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