大地の子 / 山崎豊子

2023年9月30日土曜日

小説

t f B! P L

太平洋戦争に敗戦した際に中国大陸に置き去りにされた日本人孤児が、過酷な運命に翻弄されながらも必死に活路を見出そうとする物語です。

作者・山崎豊子氏が、現地取材3年、連載開始から完結まで足かけ5年の計8年を費やした大作です。
山崎氏は泣きながら取材し、戦争への怒りをこの作品に込めたといいます。
そしてその怒りは、戦争を始めた首脳部に対するだけでなく、戦争に対して健忘症体質の日本国民にも向けられていると。
正直、重過ぎる物語なのですが、忘れてはいけない戦争の歴史であり、一度は読むべき小説だと思います。
第1巻~4巻の、私がおススメする見所、印象深いシーン、感想は次の通りです。

【第1巻】
ソ連との国境に近い満州北部の日本人開拓村で7歳になった日本人の少年は、終戦直後に戦争孤児になります。
日本兵に家や食料を略奪され肉親が強姦・虐殺されたという、日本人への生々しい憎悪を抱く中国人社会の中で、飢えと寒さと暴力に耐えながら少年は必死で生きて行きます
ようやく親切な養父母に出会い教育を受けた少年(陸一心)は、成長して製鉄工場の技師となりますが、文化大革命の中、日本人であるが故に無実の罪で拷問され囚人となって過酷な労働に明け暮れます

【第2巻】
陸一心の治療に関わった巡回医療隊の江月梅が一心の養父に出した匿名の手紙を糸口に、養父は教職を投げ打って一心の釈放を行政に訴えかけます。
養父の気の遠くなるような奮闘によって、一心はついに釈放されます。元の製鉄所に復職し、江月梅と再会し結婚します。
悲惨で過酷な囚人生活からやっと抜け出し、幸せを掴んで、よかったね~と一息つける数少ない場面です。
一心が携わる日中合同の製鉄所建設プロジェクトに、一心の実父が日本側の製鉄所社員として参加している、というのはちょっと出来過ぎな気もしますが、ドラマチックな展開になりそうな気配です。

【第3巻】
一心は月梅からの情報を元に、実の妹を探し出しついに再会します。
しかし、妹は幼い時から労働力として酷使され、読み書きも出来ないまま愚鈍な夫との子を産まされては亡くし、今では重い病気を患っていました
日本の一部の指導者が招いた戦争によって一般の国民がこんなにも大きな不幸を背負わされるとは、理不尽過ぎます。
日中合同の製鉄所建設プロジェクトは、両国の信頼関係が全く無いために現場では不毛な諍いが絶えず、更には共産党内の政争の具にされて一時凍結されます。

【第4巻】
こんなに重い小説はなかなか無いと思いますが、決して重いだけではありません。
一心は養父母を大切に思い続け、幸せな家庭を持ち、仕事での逆境を乗り越え、初恋の丹青と唇を重ね、実父とようやく仕事を離れて雄大な長江を下る船旅をしながら語り合います。
読んでて苦しくなる場面が多々ありましたが、最後はゆったり穏やかで、未来への明るい希望を感じさせてくれます。


作者・山崎豊子氏は、大人たちの罪業を否応なく背負わされた戦争孤児たちの悲劇を作品として残すことにより、日本人の記憶に留め、将来への教訓とするよう訴えかけているのだと強く感じました。
私達は、同じ過ちを繰り返さないよう、注意深く近隣諸国との新しい関係を模索し、構築していかなければならないのでしょう。
難しいことではありますが、戦争が起きて最も悲惨な目に遭うのは私達一般人ですから、「難しいからできない」とは言ってられませんものね。


日本人残留孤児で、中国人の教師に養われて成長した青年のたどる苦難の旅路を、文化大革命下の中国を舞台に描く大河小説。
満州に開拓団としてやってきた松本家の幼い長男・良雄。
だが敗戦直後に侵攻してきたソ連軍により祖父と母を殺され、妹とは生き別れになる。
日本人としての記憶をなくし、放浪し、虐待をうけ、逃亡する少年を救ったのは教師・陸徳志だった。
その養子となり陸一心と名乗る。
しかし、日本人であるがゆえに、文化大革命の嵐の中、リンチを受け、冤罪をかけられ、内蒙古の労働改造所に送られて、スパイの罪状で十五年の刑を宣告された。
使役の日々の中で一心が思い起こすのは、養父の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。
(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
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