プラハの春 / 春江一也

2023年9月17日日曜日

小説

t f B! P L

1967~68年のチェコスロバキア(当時の国名)の首都プラハを舞台に、日本国大使館員の青年と東ドイツ人の反体制派女性活動家の、禁断の恋愛を描いた小説です。

「プラハの春」とは、1968年にチェコスロヴァキアで起きた民主化改革を指します。
作者の春江一也氏は、実際にチェコスロバキア日本大使館に在勤中にこの「プラハの春」に遭遇し、ソ連軍侵攻の第一報を打電したのだそうです。
そのような実体験に基づいて創作されただけあって、臨場感溢れる描写が見事です。
上巻・下巻の見所やおススメは次の通りです。

【上巻】
外交官としてプラハに赴任した堀江亮介が運命的に出逢ったのは、美しい東ドイツ人女性で反体制活動家のカテリーナでした。
東欧の民主化が実現する約20年前、チェコスロバキアの孤独な闘いと禁断の愛が静かに始まります。
「男にとっても女にとっても愛するということは耐えることでもあるのだ。耐える勇気がない愛情は本物ではない。ただの情欲だよ。情欲を愛情と勘違いしておるだけのことよ」
・・・ユダヤ人の妻を強制収容所で亡くした老学者シュテンツェルの言葉が重く響きます。
チェコの国営ラジオのナビゲーターを引き受けたカテリーナと亮介の恋はどうなるのでしょう?

【下巻】
1969年、ソビエト連邦を中心としたワルシャワ条約機構の軍事侵攻により、チェコスロバキアは占領され、「プラハの春」は阻止されてしまいます。
「プラハの春」を先導したものの、結局はソ連に屈し自らその幕引きをせざるを得なかったドゥプチェク(共産党第一書記)は、さぞ無念だったことでしょう。
第二次世界大戦ではナチスドイツに、その次はソ連によって、国土を蹂躙された小国チェコスロバキアの悲哀を感じずにはいられません。
大使館員の堀江と美しいカテリーナの激しい愛も、時代の流れに翻弄されます。


当時のプラハの政治的に緊迫した動きを縦糸とし、命がけの恋愛を横軸とした、しっかり練られた小説だと思います

ドゥプチェクが復権し、チェコスロバキアの民主化革命(ビロード革命)が実現したのは1989年。実に「プラハの春」から20年以上経った後でした。
春江氏の作品はこの後、『ベルリンの秋』、『ウィーンの冬』と続いていきます。

1967年3月、プラハ。
チェコスロバキアは共産主義の抑圧から脱し、経済改革と自由化への気運を高めつつあった。
そのさなか、堀江亮介はビーナスのようなカテリーナ・グレーベと出会った。
だが、亮介は日本国大使館員、カテリーナは東ドイツ人の反体制活動家。
東西対立の最前線の地では、禁断の愛だった―
現役外交官が自らの体験をもとに描いた、国際ラブ・ロマン。
(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
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