ライセンス契約のすべて 実務応用編 / 吉川達夫 , 森下賢樹

2026年3月28日土曜日

ノンフィクション

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ライセンス契約の実務を体系的に理解し、契約作成・交渉・リスク管理を一冊で網羅した定番の実務書です。

ロイヤルティ不払い、倒産、独占禁止法、特許権消滅など、現場で頻出するリスクを具体的な事例とともに解説してくれます。
さらに、12の失敗事例から “どこで判断を誤り、どう防ぐべきか” を学べる構成になっており、ノウハウ契約や国際ライセンス契約における交渉術、条項のバリエーションも丁寧に整理されています。
モデル契約書のダウンロードサービスも付属し、研究開発・IT・製薬・コンテンツなど幅広い業界で即実務に活かせる内容です。
私の印象に残った点を以下にご紹介します。

【ロイヤルティの回収に関する留意点】

  • 売上に応じてロイヤルティを発生させる「定率方式」を採用した場合は、ベースとなる売上について理解に齟齬が発生するリスクがある。例えば、総販売額そのものなのか、又はそこから、運送料、梱包料、倉庫保管料、通関費用、関税、消費税、返品分などを差し引いた純販売額なのかが問題になる。また、販売したにもかかわらず売上が回収できなかった場合にはどのように扱われるかが不明確な場合も問題となる。
  • ライセンシーに独占的通常実施権を付与する場合には、その見返りとしてミニマムロイヤルティの設定を検討すべきである。または、最低限の売上を達成できない状態が続いた場合には、非独占の実施権に切り替えられることや、ライセンス契約を解除する権利をライセンサーが得ることなども選択肢として検討するとよい。
  • 国際ライセンス契約であれば、株式会社日本貿易保険(NEXI)が引受けを行う知的財産権等ライセンス保険に加入するという方法がある。この保険では、相手方の破産や債務不履行により対価を回収できなくなった場合に、その損失をカバーすることができる。また、仕向国における戦争などによる損失までもカバーしている。

【通常実施権の第三者対抗要件】

  • 2011年の特許法改正により、いわゆる当然対抗制度が導入され、特許権の通常実施権については、特許原簿に設定登録をせずとも保護されることになった。(参考:特許法第99条「通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。」)
  • 他方、通常実施権者からサブライセンスを受けたサブライセンシーが対抗力を備えるには、特許権者とサブライセンシーが共同で通常実施権の設定登録を申請しなければならない。(特許登録令18条)

【独占禁止法に関する留意点】

  • ライセンス契約において、ライセンシーが開発した改良技術について、①ライセンシーからライセンサーへの譲渡義務(アサインバック条項)や②独占的ライセンス義務(独占的グラントバック条項)を課した契約条項は、公正取引委員会のガイドライン「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(以下、「ガイドライン」という)では、不公正な取引方法に該当し違法となる可能性があるとされている。
  • 複数のライセンシーにライセンス(マルティプルライセンス)する場合、実施許諾した製品の販売価格、販売数量、販売先等を制限する行為が事業者の事業活動の相互拘束にあたり、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には不当な取引制限となる。
  • パッケージライセンス契約において、必要な範囲を超えた技術のライセンスがパッケージで義務付けられている場合は、ライセンシーの技術選択の自由が制限されることから、ガイドラインでは不公正な取引方法に該当し得るとされている。

【 TPP 協定に基づく特許権の延長】

  • TPP協定に基づき、日本で特許権を取得した者は、特許出願の日から5年、又は、出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後に特許権の設定登録があった場合には、その遅滞期間(上記いずれか遅い日~設定登録までの期間)だけ特許権の存続期間を延長することを可能とした。ただし、拒絶査定不服審判や拒絶審決に対する審決取消訴訟に要した期間については延長されない。

【ライセンス契約全般に関する留意点】

  • 「完全合意条項(Entire Agreement Clause)」とは、契約書に明記された内容以外の合意の存在を否定する条項をいう。契約締結前の交渉過程で成立した合意や了解事項をすべて無効化することで、契約書以外の事情に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
  • 特許ライセンス契約においては、特許が無効になった場合に限らず、(年金不払い等により)特許権が消滅した場合についても契約が直ちに終了するといった内容の規定を設けておくことも考慮に値する。
  • ロイヤルティに賦課される源泉徴収税(withholding tax)どちらが負担するか明記する必要がある。日米間では、2004年以降新しい租税条約が適用され、 ロイヤルティについては税金がかからなくなったので、純粋な使用料だけを送金すればよくなったが、その他の国との間では契約書に明記しないとトラブルになり得る。

ライセンスの交渉から契約締結までのリスクマネジメントに携わる実務者・管理者におススメします。

ライセンス契約について、「契約作成のポイント」、「ライセンス契約失敗事例」、「有利に進めるライセンス契約交渉術」等を解説した、ライセンス契約に関する定番書。
近年のビジネス実務の変更に伴う情報のアップデートを行った改訂第2版。
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(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
医療・医薬に関する一般向けの本、母のための老人施設・介護の本、私が興味を持つ科学、音楽、歴史に関する本、時事解説本、小説など、年間100冊程度読んでいます。
私が実際に読んでぜひ皆様におすすめしたいと思った本やその関連情報をこのブログで発信していきます。

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