音律と音階の科学 / 小方厚

2023年12月17日日曜日

ノンフィクション

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音楽の基礎である音律(どんな高さの音を使うかというルール)と音階(音律の中から使う音を選んで高さの順に並べたもの)が、どのようにして作られ、現在の姿に至ったかを、科学的に解説してくれる本です。

現在広く使われている十二平均律では、ドと1オクターブ上のドでは周波数比は2倍であり、ドから半音ずつ上がっていくとき、元の音と半音上の音の周波数比はどれも一定(2の12乗根≒1.0594)の比率で増えていくよう調整されているそうです。
ここにたどり着くまでの、さまざまな音律と音階の発見と改良の過程が説明されています。
私の印象に残った興味深い「発見と改良」の一端を以下にご紹介します。


・西洋音楽を含めた多くの音律で、1オクターブ離れた2音はよく似た音と認識され、同じ呼称で呼ばれている。
・2音を重ねたとき、その2音の周波数の比が簡単なほど響きが良いことは、古くから知られていた。

【ピタゴラス音律】
紀元前6世紀にピタゴラスは、一弦琴を2つ並べ、1つを開放弦(弦を押さえない)で、もう一つは弦の全長の1/3の位置を押さえて弾くと、2音が心地よくハーモニーを奏でることを発見した。そのとき、1/3で押さえた位置の左の弦も右の弦も(つまり弦長が1/3と2/3のどちらであっても)、開放弦と美しく響き合った。
・これは、開放弦が出す音の中には、基本波(波長=1)の他に、2倍波(波長=1/2)や3倍波(波長=1/3)がもともと混じっているからなのだという。
・ピタゴラスは、この1対21対3という周波数比(弦長では2対1と3対1)を組み合わせて音律を作る
・具体的には、最初の音(根音)の周波数を3倍し、次にこれを2で割って第2の音を作る。2で割ったのは、根音とその1オクターブ上の音の間に第2の音を配置するためである。1オクターブ離れた音(2で割る前の周波数と割った後の周波数)はよく似た音に聞こえるという性質を利用したもの。
・次に周波数が3倍の音がもとの音と協和することは既にわかっているので、第2音の周波数を3倍にして第3音とするのだが、ここでもこの第3音を根音から1オクターブの間に配置するために、2で2回割る。
・この手順を繰り返し、3を12回掛け合わせて2で18回割ると、(3^12)/(2^18)=2.02729…となり、これを2とみなす(つまり最初の音の1オクターブ上の音とみなす)ことにした。これをピタゴラス音律という。
・なお、紀元前の中国では、(弦ではなく)笛の長さを調整してピタゴラス音律と全く同じ音律が作られていた。異なる文化圏で同じことを考えてたんだなぁ。

【純正律】
ピタゴラス音律には、C(ド)とE(ミ)の響きが悪いという欠点があった。
・2音を重ねたとき、その2音の周波数の比が簡単なほど響きが良いことは、古くから知られていた。
・しかし、ピタゴラスは2と3にのみ注目したため、3の次に大きい素数5を使った音が無い。そこで、最初の音に対する周波数比で5の倍数を導入した「純正律」が登場する。
純正律では、C(ド)の周波数に対して、E(ミ)に5/4、A(ラ)に5/3、B(シ)に15/8の周波数を配置した。これにより、C(ド)とE(ミ)の響きも美しくなった。


【十二平均律】
ピタゴラス音律純正律は、現在ではほとんど使われていない。これは転調がうまくできないためである。
・特に、鍵盤と音が1対1で連結している鍵盤楽器で、この欠点が致命的であり、鍵盤楽器の代表であるピアノが大量生産され普及するにつれ、「十二平均律」が主流になり、現在に至っている。
・ドと1オクターブ上(周波数比が2倍)のドまでに、均等に12の半音を配置し、半音を1つ上がる毎に周波数比を一定(2の12乗根≒1.0594)の比率で増していくことにより、協和度を少しばかり犠牲にして転調を可能にしたのだという。


何気なく聞いている「ドレミファソラシド」だけど、こんな歴史があったとは!学校の音楽の時間に、こういう授業を受けたかったなぁ...
他にも、五度円、ピタゴラスコンマ、楽器、和音、コード進行などなど、音楽の基礎が幅広く解説されているおススメの一冊です。

音楽では特定の高さ(周波数)の音(ドレミ…)しか使えない。
なぜそのような不自由な形になったのか?
この「不自由さ」が生まれたのは、よりよい音の組み合わせを追求した結果だった!
紀元前6世紀のピタゴラス研究から始まる音律の進化をたどり、簡単な数学にもとづく音楽の「心地よさ」の秘密を解き明かす。
(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
医療・医薬に関する一般向けの本、母のための老人施設・介護の本、私が興味を持つ科学、音楽、歴史に関する本、時事解説本、小説など、年間100冊程度読んでいます。
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