坂の上の雲 / 司馬遼太郎

2023年11月5日日曜日

小説

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明治維新を経て近代国家として生まれ変わった日本が、欧米列強の後を必死で追いかけ、日清戦争を乗り越え、ついに日露戦争においてロシア帝国を破るまでを描く、司馬遼太郎の代表作です。


旧伊予国(愛媛県)松山出身で、日本陸軍における騎兵部隊の創設者である秋山好古、その実弟で海軍における海戦戦術の創案者である秋山真之、真之の親友で明治の文学史に大きな足跡を残した俳人・正岡子規の3人を軸に、明治時代の日本が描かれます。
第1巻~第8巻のおススメの名場面と私の感想をご紹介します。

【第1巻】
新興国家日本の成長期に青春時代を送った旧伊予国(愛媛県)松山出身の3人の若者の物語が静かに始まる。
日本陸軍における騎兵部隊の創設者である秋山好古、その実弟で海軍における海戦戦術の創案者である秋山真之、真之の親友で明治の文学史に大きな足跡を残した俳人正岡子規。
個人の栄達が国家の利益と合致する昂揚の時代に、3人の若者は各々の道を邁進する。
帝国主義が悪であるという国際常識はまだ無く、列強に侵略されないために日本はがむしゃらに欧州に学び体制整備を急ぐ、そんな時代が描かれる。

【第2巻】
朝鮮の宗主権を主張する清国に対し、満州を制圧下に置こうとするロシアはその余勢を駆って新たに朝鮮の保護権を主張する。
朝鮮をロシアに取られれば、日本の防衛は成り立たないとの危機感を持つ伊藤博文首相と、政治の枠をはみ出して侵略戦争を仕掛けたい軍の参謀本部。
「眠れる獅子」清国と戦争しても勝ち目はない、とほとんどの日本人は思っていたという。しかし、満州族からなる清朝のために命をかけて戦う漢民族は少なく、黄海開戦も陸戦も日本が連勝する。
正岡子規は結核と戦いながら、写生を重視する新たな俳句の世界を創造していく。

【第3巻】
月明かりの夜、とうとう正岡子規は逝った
ロシアの皇帝ニコライ二世は小国日本から戦争に踏み切る可能性はないと考え、「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」と言う。しかし、「臥薪嘗胆は流行語ではなく、すでに時代のエネルギーにまでなっていた」のだった。
国家予算の半分以上を軍事費に費やすほど国民は生活を犠牲にし、日清戦争から10年、ついに日本はロシアに戦争を仕掛ける
兄・好古は自らが育成した騎兵部隊の統率を任され、弟・真之連合艦隊参謀として海上作戦の立案を委ねられる。
ロシアの旅順艦隊は、要塞に守られた旅順港に籠りバルチック艦隊の到着を待つ。日本はこれをおびき出したり、古船を沈めて港に封じ込めようとするも、苦戦する。

【第4巻】
旅順港に籠るロシア旅順艦隊はウラジオストックへの移動を命ぜられてついに出港する。ロシア側は戦闘よりも移動を優先し、日本側はその意図が理解できず振り回され迷走する。しかし結果的には日本側が旅順艦隊の多くを無力化させることに成功。
バルチック艦隊はバルト海を出発するが、ロシア側司令官は日本の駆逐艦がデンマーク海峡で待ち伏せしていることを警戒するあまり、暗闇で英国漁船を誤って攻撃し、更に味方艦同士で撃ちあう。
一方、旅順の要塞を攻撃する日本陸軍は、乃木大将と伊地知参謀長による単調な突撃命令の連続により日本軍2万人が犠牲となる。兵士一人一人に家族がいるのに、あぁ...なんという指導者の無為無策。

【第5巻】
満州軍総参謀長の児玉源太郎は旅順を訪れ、友人である乃木将軍に、「指揮権をわしに一時借用させてくれぬか」と切り出す。
児玉は戦線後方の重砲を24時間以内に二百三高地の間近に移設させ、至近距離から周辺砲台を狙い撃ち、歩兵を援護するよう命じた。
砲兵専門家の常識からは考えられないことだったがそれを論破し、最前線の戦況を直接観察することの必要性を伝え、乃木の面目をつぶさぬよう配慮しながら戦略を転換させるという難題をなんとか達成した。
日本軍は二百三高地を1日で奪取し、以後優勢となる。
敵将ステッセルは配下の将校が必死に交戦しているさなかに独断で、降伏を伝える使者を送り出す

【第6巻】
旅順で勝利した後、その内陸部の黒溝台で両軍対峙したまま冬を迎える。
ロシアが大規模な攻撃を準備していることを騎馬隊が察知し好古らは頻繁に報告するが、総司令部は「ロシア軍は冬季に動かない」という無根拠の固定観念に捕われる
ロンドンの日本公使館も同じ情報を掴み、東京経由で現地総司令部に伝えたにも関わらず活かされなかったのは、なんとも残念!
ロシア軍十万人の大攻勢を「突如」受け日本軍は大混乱するが、ロシアは司令官と大将の対立により勝機を逸する
また、ロシアやその周辺国では軍事力と秘密警察による圧政への不満が高まり政情不安に。
著者は、日露戦争後に新聞各紙がロシアの敗因を分析し国民に知らしめなかったことが、その後の日本軍の必勝神話を生む遠因になったと指摘する。なるほど、ロシア側が失策により自滅したようなものなのに、それが報道されなければ「必勝神話」になるかも。

【第7巻】
黒溝台で辛くも敵を撃退した日本軍は、奉天(現在の瀋陽)で再度ロシア軍と激闘する。
兵士と弾薬の数量で劣る日本軍は絶体絶命の危機に陥るが、恐怖心が強く日本軍の動きに過敏に反応し過ぎる防御体質のロシア軍指揮官クロパトキンの指揮のまずさに助けられる。
最後は、まだ余力を十分に残すロシア軍にクロパトキンが総撤退を命じたことにより、満身創痍の日本軍が無人の奉天になだれ込む。
日本の新聞はこの戦勝記事で国民を野放図に煽り、そのうちに煽られた国民に逆に煽られるはめになり日本軍が無敵であるかのような錯覚を抱くようになった、と著者は嘆く。
兵士と弾薬を失った満州軍総参謀長の児玉源太郎は東京に戻り早期講和を催促するが、戦勝に沸く日本もバルチック艦隊に望みをかけるロシアも、この時点では米国の講和周旋に乗らない。

【第8巻】
ロジェストウェンスキー提督が率いるバルチック艦隊は、英国の圧力により各地で石炭や食料等の積込みに難渋しつつ、また艦船の故障や士気の低下に悩まされつつ、ようやく東シナ海に至る。
ウラジオストック港に入る経路は、対馬海峡を抜けて日本海を通るルートか、太平洋から津軽海峡を経るルートか、迎撃作戦を練る真之予想以上に低速度で迫る敵に焦らされ苦悩する。
結果は、対馬海峡で迎撃に成功し、敵艦隊を撃滅。日本側の砲撃命令の工夫や訓練により最初の30分で大方の勝敗は決したという。


作者・司馬遼太郎は、約5年の調査の後、1968年~1972年までの約5年間、産経新聞にこの小説を連載しました。
「坂の上の青い天にもし一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂道をのぼってゆく」、そんな明治時代の昂揚の気風を感じることができる、不滅の文学作品です。

明治維新をとげ、近代国家の仲間入りをした日本は、息せき切って先進国に追いつこうとしていた。
この時期を生きた四国松山出身の三人の男達―日露戦争においてコサック騎兵を破った秋山好古、日本海海戦の参謀秋山真之兄弟と文学の世界に巨大な足跡を遺した正岡子規を中心に、昂揚の時代・明治の群像を描く長篇小説全八冊。
(amazonより抜粋して引用)

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関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
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