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米ミシガン州弁護士でありApple Computer法務部長を経験した著者が、不利な条件を覆すための実践的な交渉戦略を体系化した専門書です。
契約交渉の基本姿勢から、一般条項の修正案・対案の提示方法、NDAやLOIなど主要契約の条項別交渉パターンまで、日本語・英語双方の契約書に対応した具体的な実例を豊富に収録されています。不平等契約への対処法や下請法に関わるケースも扱い、弱い立場でも有利な合意を引き出すための実務的なポイントを示します。
最後に、交渉で勝つための「チェックリスト10」を掲載し、契約交渉の全体像を俯瞰しながら実務に直結する知識を身につけられる構成です。
私の印象に残った内容の一部を以下に要約してご紹介します。
【停止条件と解除条件】
- 「停止条件」は、条件が成就して初めて本文の規定が有効になる。
- 「解除条件」は、最初から本文の規定は有効だが、条件成就により解除される(効力を失う)。
- 特許を保有する米国企業が特許使用料の徴収金額を最大にするためによく使う手法は、まずは交渉力の弱い企業と交渉し、その最初の実績を元にその後、より手強い企業を相手に有利に交渉を進めるという方法である。
【裁判管轄】
- 外国の企業と裁判で争ったとき、判決の効力はその裁判所が存在する国でしか効力を持たない。他の国で効力を持たせるためには、 その判決を他の国の裁判所に持ち込んで承認してもらわなければならず、それには多大な費用と時間が必要となる。
- そこで、もし勝訴判決が下ればそれをそのまま相手国で強制執行できるよう、裁判管轄を被告地とする(=お互いに相手国の裁判所に提訴する)「被告地主義」の契約が増える傾向にある。その場合、準拠法も被提訴国の法律が指定されることが多い。
【陪審裁判】
- アメリカの裁判所では、$20を超える民事裁判については、合衆国憲法により陪審裁判が保証されており、日本企業が反対してもアメリカ企業が要求すれば陪審裁判となる。米国国民が参加する陪審裁判では外国企業に不利な判決が出やすい。
- 対策としては、裁判管轄を米国各州と指定することを避ける、契約書に仲裁条項入れて裁判を避ける、又は、契約書に Jury Trial Waiver 条項を入れて陪審裁判を回避する(裁判官裁判 bench trial とする)のが有効。
【FeedBack条項 】
- 秘密保持契約書では、開示された情報に対して受領者側がその評価や新たな改善案等を返した際に、そのフィードバック情報の扱い(帰属、利用権限)を定めるFeedBack条項が重要となる。
- フィードバック情報は、フィードバックした者に帰属し、フィードバックを受領した者はそれを自由に利用できるとするのが双方向で対等の関係。
【請負(契約)と準委任(契約)】
- 日本法において「業務委託(契約)」は、「請負(契約)」と「準委任(契約)」の2種類に大別される。
- 「請負」は、成果物の引渡しを前提とした、仕事の完成を約束する契約である。
- 「準委任」とは、訴訟の遂行など法律行為に適用される民法643条~655条の「委任」の規定を、システムやプログラムの完成など事実行為(法律効果を生じさせる意思を伴わない、純粋な事実上の行為)に準用(民法656条) するものである。
- 日本法を準拠法として指定すれば、英文契約書であっても「本契約は請負(Ukeoi)とする」と明記することで、日本の民法の請負の規定が適用される。
- 英米法では、「請負/準委任」という選択肢は存在しないため、準拠法を日本法としない場合には、「義務」(duty)とするか「努力義務」(reasonable effort)とするか、個々に規定していく。
【独禁法との関係】
- 非係争条項(Non Assertion Provisions = NAP)は、ライセンサーがライセンシーに知財権の使用をライセンスする場合に、ライセンシーが(仮に特許などの権利を保有していても)ライセンサーに対してその権利を行使しないことを約する規定である。過去にマイクロソフト社が日本のPCメーカーにOfficeをライセンスする際に課した条項であり、「優越的地位の濫用」+「過度に広い非係争義務」と判断され、 独禁法違反で無効とされた。
- ライセンシーはライセンサーからライセンスを受ける知財権の有効性について異議を申し立てないことを約束する条項(いわゆる不争条項)は、独禁法違反の可能性が高い。
- 特許のライセンス契約において、ライセンシーが行った改良技術の特許をライセンサーへ 無償で譲渡させる、又は、無償で独占的実施許諾を認めさせることを定めた契約書は、独禁法上問題となり得る。
- 「業務委託(契約)」において、成果物の知的財産権について委託者が無償で譲り受ける契約条項は、独禁法違反となる可能性がある。著作権等の知的財産権の譲渡を受ける場合には、「本件対価には、成果物の著作権の対価を含む」と追記するなどして、委託者が著作権を有償で譲り受けたこと (無償譲渡を強制したわけではないこと)を明示するよう注意する必要がある。
【独禁法違反の条項への対抗策】
- 特許ライセンス契約のライセンサーは、独禁法違反の条項を入れてきて、「可分性規定(契約の一部の条項が違法又は無効とされてもその他の条項は有効に存続するという規定)があるから大丈夫」だと説明することがある。そんなときライセンシー側からは「この規定が法的に有効であるというのなら、この可分性規定を削除してもよいのではないか?」と主張するとよい。もし独禁法でクロとなり、契約全体が無効となって困るのはライセンサーだからである。
【損害賠償請求リスクの低減】
- ライセンス契約においてライセンサー側は、高額の損害賠償請求を受けるリスクを如何に低減させるかが重要となる。一例として、第1項で損害賠償責任を全面否定し、第2 項では直接損害以外の間接損害等の責任は負わない(反対解釈により直接損害の責任は負う)とし、第3項では金銭的損害賠償の上限を「ライセンシーがライセンサーに支払った利用料」と定め、第4項では「本契約に定める(損害賠償等の)責任の制限がなければ、ライセンサーは本契約を締結しなかったことを、ライセンシーは認める。」と明記された条項が示されている。
【通常実施権の対抗要件】
- 特許権者が特許を第三者に譲渡したり、特許権者の倒産により破産管財人等の保有管理することになった場合、元の特許権者から実施権の許諾を受けていた者の実施が差止請求や損害賠償請求の対象となりうるという懸念があったが、2012年の特許法改正により、日本法を準拠法とする場合には、通常実施権は当然に対抗力を有する(特許法第99条)こととなった。
【Tag Along ・ Drag Along】
- Tag Along right (共同売却権)=多数株主が自分の株式を第三者に売るとき、 少数株主も同じ条件で一緒に売却できる権利。少数株主を守る仕組み。 tag along(後ろについていく/一緒に行く)より。
- Drag Along right (一括売却請求権)=多数株主が 第三者に株式を売るとき、 少数株主にも売却を強制できる権利。多数株主が少数株主を引っ張る仕組み。drag(引きずる/強制的に連れていく)より。
【契約書の英語表現】
- save as ~ ~の場合を除き(=except for 又は except that )
- apply mutatis mutandis to ~ ~に準用する
【契約交渉のチェックリスト10(条件交渉で勝つための鉄則)】
①己を知る(自社の決定権者と自社のbottom line の認識をすり合わせる)②相手の決定権者を正確に把握する
③交渉相手のbottom line を理解する
④法律違反の条項は削除してもらう
⑤相手企業にとって受け入れるメリットや上司への説明を用意する
⑥合意できない場合はあえて合意しない選択肢を取る(相手の提案に合意せず、条項を空欄のままにすることで、 結果として法律の任意規定を適用させ、自社に有利な結論を自動的に得る)
⑦沈黙は金なり(日本人の沈黙に耐えきれず、外国人側がどんどん妥協案を出すこともある)
⑧契約書のドラフトは自社から提示する(自社の土俵で戦う方が有利)
⑨法務部長や弁護士を悪役に仕立てて交渉する
⑩交渉の事前準備を十分行う(相手の主張を予測し代替案を多く用意しておく)
企業間の契約交渉を担当する実務者におススメします。
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(amazonより抜粋して引用)

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