植田日銀 こう動く・こう変わる / 清水功哉

2023年11月11日土曜日

ノンフィクション

t f B! P L

日経新聞編集委員の著者が、1999年のゼロ金利政策以降の日銀の金融緩和の経緯と、今後の植田総裁による金融政策の修正・正常化への取り組みに関する予想を語る本です。

植田総裁の経歴やこれまでの実績紹介、1999年以降の経済状況、それを背景とする金融政策、その成果が概説されます。
この本を読み、私の印象に残った点、注目ポイント、感想などをご紹介します。

まず植田総裁は、高校時代は数学者を目指していて東大理学部数学科に進みますが、卒業後に専門を変えて、東大経済学部大学院、MIT経済学部大学院等を経て東大経済学部教授になった経済学者です。
その一方で、一時的に大学を辞めて日銀調査統計局に籍を置いたり日銀の審議委員を務めるなど、金融当局者としてのキャリアも併せ持つのだとか。
経済学者と金融当局者の2つの経歴を持つ人物は、日本ではかなり稀有な存在のようです。

1999年2月に日銀は、短期金利をほぼゼロにする「ゼロ金利政策」を導入。伝統的な金融政策ではこれ以上金利を下げる余地が無い状況で、審議委員の植田氏は、一定の条件が満たされるまでゼロ金利を維持することを社会に約束(フォワード・ガイダンス)することにより長期金利に下げ圧力を加えるという「時間軸政策」を提案します。その手法は、やがて海外の中央銀行も採用することになる「金融政策のイノベーション」だったと、著者は解説します。
その後、日本経済は持ち直すかに見えましたが、2008年のリーマンショック後には再び物価が下落し、2010年10月には包括的な金融緩和政策が導入されます。これは、先述の時間軸政策日銀の長期国債購入により長期金利を下げて経済を刺激するとともに、日銀が社債やETF(上場投信)等を購入することにより企業の資金調達環境の改善や株価の下支えを図り、デフレ脱却を目指す政策でした。しかし、物価上昇率は思うように伸びません。

2013年4月に就任した黒田総裁は異次元の金融緩和政策(黒田バズーカ)を開始します。2年で2%の物価上昇率を目標として、以前は約20兆円程度だった年間の国債購入ペースを、2013年には50兆円規模に、更に2014年には80兆円規模に拡大します。
黒田バズーカにより一時的に物価上昇率は伸びますが、2年ほどですぐに縮小してしまいます。
そこで黒田総裁は、2016年1月にマイナス金利(当座預金金利:-0.1%)を開始し、同年9月にはイールド・カーブ・コントロールを導入して長期金利(10年物国債利回り)をゼロ%程度に操作することにより、持久戦で物価上昇率2%を目指します。
2020年には新型コロナ感染症による大混乱が起き、そこからの経済回復と、2022年ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー・資源高騰を背景に、米国FRBは2022年3月以降急激に利上げを行います。
この日米の金利差によって大幅な円安ドル高となり、輸入物価が高騰した結果、皮肉にも日本の2022年1月の物価上昇率は4%を超えますが、これは経済の力強さに起因するものではなく、実質的な賃金は低下していたのでした。
そして、2023年4月には植田総裁がバトンを受け、金利の上限許容幅を少しずつ広げるという微妙な政策修正を開始していることは周知のとおりです。従来の金融緩和政策を修正・正常化していく動きに、今後ますます要注目です。

政策金利、国債価格、消費者物価、株価、為替相場等の相互の複雑な関係など、まだまだ私の理解が及ばない点は多々ありますが、この本には直近までの金融緩和政策がわかりやすく整理されているので、私にとっては最新のバイブルです。
これからも植田日銀の動きをウォッチし続けたいと思います。
経済学者として初めて日銀総裁に就いた植田和男氏。 日銀・財務省OBではないしがらみのない立場で、異次元金融緩和の修正・正常化にどう取り組むかが注目されています。
植田日銀は何を引き継いだのか、新体制のシグナルはどのように読めばよいのか、住宅ローンにはどのような影響があるのか。
日銀ウオッチャーとして定評があり、ファイナンシャルプランナー資格も持つ日本経済新聞編集委員が、新総裁の横顔から政策と生活への影響までをわかりやすく解説しました。
景気の先行きを読むための必読書です。
(amazonより抜粋して引用)

このブログを検索

ブログ アーカイブ

自己紹介

自分の写真
関東在住で、医療関係の事務に携わっています。
家事・育児と、遠隔地で一人暮らしをする80歳代の母の健康状態にも目を配りつつ生活しています。
医療・医薬に関する一般向けの本、母のための老人施設・介護の本、私が興味を持つ科学、音楽、歴史に関する本、時事解説本、小説など、年間100冊程度読んでいます。
私が実際に読んでぜひ皆様におすすめしたいと思った本やその関連情報をこのブログで発信していきます。

インドの野心 / 石原孝、伊藤弘毅

リンク 朝日新聞の記者としてニューデリー支局に勤務した経験を持つ著者2名が、文化、教育、経済、外交などさまざまな角度から「急成長する大国インドの実像」を描いた新書です。 世界最大の人口 を抱え、 若年層が多い という強みを持つ一方、 教育格差や雇用不足 、 宗教・...

フォロワー

QooQ